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おおいたサイエンス・カフェ2012report

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おおいたサイエンス・カフェ2012
「科学が安全を保証するか・法は安全を保証するか」
  ~大震災から1年 今もっとも気になるあの問題をカフェで語ろう♪~」

開催報告 中村多美子
独立行政法人科学技術振興機構(JST)
社会技術研究開発センター(RISTEX)
「不確実な科学的状況での法的意思決定」プロジェクト代表

6月10日、「大分に青少年科学館を作る会」の全面的なご協力のもと、大分合同新聞社のご後援を得て、「おおいたサイエンス・カフェ2012 『科学が安全を保証するか・法は安全を保証するか』」が開催されました。

当プロジェクトでは、これまで様々なイベントを企画してきましたが、実は、これまでのイベントは都会で開催される機会が多かったためか、「法と科学」の問題に、それなりに関心をもったセミプロ的な参加者がけっこう参加していたといえると思います。
しかし、法グループが法律事務所をかまえる大分県は、なんと数少ない全国でも指折りの「科学館のない県」なのです!そういう地元でサイエンス・カフェを展開する「大分に青少年科学館を作る会」の心強い協力を得て、果たして、「法と科学」の問題は、当プロジェクトが提起するような問題をほとんど考えてみたことのない参加者に、どのように受け止められるのか、という一大社会実験(?)となりました。

おおいたサイエンス・カフェ2012では、プロジェクト外から、平川秀幸氏をお招きしました。
平川氏は、科学技術社会論の研究者として、最近では、福島第一原発の問題などに関しても、メディアで活躍されています。
迎え撃つのは、本プロジェクトの若手法哲学研究者吉良貴之氏。これまで本プロジェクトの法哲学漫談企画で同じく若手法哲学研究者小林史明氏とともに、シニカルな笑いを振りまいてきました。
そして、ファシリテーターに、科学ひろば主催の立花浩司氏、メインギャラリー(容赦のないツッコミ要員)に大分の誇る徳田靖之弁護士という豪華メンバーで開催とあいなりました。
その模様を「作る会」のメンバーから見た様子は、下記リンクでご覧ください。

さて、当プロジェクトの目論見としては、「あの問題」って「どの問題?」が、平川さんのリードから参加者次第で広がっていく(広げるためにツッコミと笑いという要素を準備する)、そして、テーブルトークないし会場全体の議論につなげていく、というものでした。実際、これまでのイベント企画では、わりと効を奏してきましたし、二つの高度に専門化した領域である法と科学の専門家が、どちらの専門にも属しない人々との対話を通じて、互いの敷居を下げることにも成功してきたかに思えていました。

「法と科学」が対象とする問題領域は、実は結構息苦しく、重たいものです。だからこそ、「笑い」のセンスが必要になります。でも、「笑い」って、場の共有ができないとなかなか生まれてきませんでした。

震災の現場からちょっと離れた大分県。そこでも、震災から逃れてきた人々はたくさん暮らしています。そして、海を隔てて指呼の距離にある、伊方原子力発電所は、日本で最初の原子力発電所の裁判が争われた場所でもあります。そして、今まさに、震災がれきの広域処理の問題は、広く県民の身近な問題となっています。

シリアスな問題について、正面から議論するということに、そうそう慣れていない「普通」の人々に、議論慣れしているメンバー達が投げる直球勝負のストレートは、「笑い」の衣をまとおうとしても難しくて、やっぱりびっくりされてしまったのではないかと主催者として反省するのです。

それでも、平川さんの真摯な語り口、立花さん、そして作る会のみなさんが、参加者の方々とつなごうとしてくださった投げかけ、吉良さんの変化球で、テーブルトークでは、互いにあまり面識のない参加者のみなさんが、それぞれに盛り上がっていた様子でした(特に、当プロジェクトの科学技術社会論グループであるM氏のテーブルは大変な盛り上がりで、遠方から駆けつけたM氏も楽しさ満点という表情でした。)。

私が、このプロジェクトに参加しようと決めたとき、大先輩である徳田弁護士からは、「弁護士であることを忘れるな」というエールをいただきました。少し現場から距離を置いて、物事を多角的に眺めるという大切さには間違いはありません。しんどさが際だつ現場の議論の難しさを、笑いとともに社会と共感できたらという方向性もそうはずれてはいないはずです。

「笑い」は、おそらく作れるものでもなく、演じられるものでもなくて、生まれてくるものなのでしょう。「法と科学」という設定で、メンバーがイメージするような漫談を、本当に幅広い人々と共有できるようになるまで、道筋は遠いかもしれませんけど、一つ一つの出会いが、きっと次のアクションにつながっていくはずです。

最後に、話題提供の平川さん、遠方から駆けつけてくださったプロジェクトのメンバーのみなさま、万全の体制をぬかりなく尽くしてくださった作る会のみなさま、そして、募集後わずか3日で満員御礼となったたくさんの参加してくださったみなさまに心から御礼を。

また、きっとお目にかかりましょう。

イベント関連サイト
http://kokucheese.com/event/index/36292/
http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/staff/hirakawahideyuki.php
http://kagakukan-oita.net/modules/information/index.php?content_id=72

プロジェクト連絡先

 弁護士法人
 リブラ法律事務所
 〒870-0049
 Tel.097-538-7720
 Fax.097-538-7730
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